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角膜形状測定装置「TMS-2N」に、角膜不正乱視を定量化する「フーリエ解析ソフト」が搭載されました。
このアプリケーションソフトは東京大学眼科 大鹿哲郎助教授、大阪大学眼科 前田直之助教授他の先生方のご協力により開発されました。
このほど開発者である大鹿哲郎助教授、富所敦男先生(大宮赤十字病院眼科)に、ソフトウェアの原理と解析の実例を解説していただきましたので、ご紹介いたします。
角膜形状解析装置で得られた,ある円周上の屈折力分布をグラフ上にプロットすると,360゜中に2つの山と2つの谷を持った曲線となる(図1)。このデータ列を,式(1)(2)に基づいてフーリエ変換することによって,0次からn次までの正弦曲線に分離できる。
本式を展開すると,
これらのうち,直流基本波(0次)は球面成分(等価球面度数),フーリエ正弦波の1次成分は非対称成分,2次成分は正乱視成分,3次以上の成分は高次不正乱視成分と定義される。つまり,球面成分a0,正乱視成分2*c2,非対称成分2*c1,高次不正乱視成分c3...nと計算される。なお,眼鏡で矯正できない広義の不正乱視は,非対称成分2*c1と高次不正乱視成分c3...nである。通常,この計算を角膜中心約3mmないしは中心2〜9本のマイヤーリングについて行い,単純あるいは加重平均した値をその眼の屈折成分として用いる。
また,これらの4成分を数字で表すだけでなく,カラーコードマップを4成分ごとに分けて表示することも可能となり,角膜形状の理解に非常に役立つものになることが期待される。
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図1 フーリエ解析の原理
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ビデオケラトグラフィーの測定結果をフーリエ解析により処理し,球面成分(spherical equivalent),正乱視(regular
astigmatism),非対称成分(asymmetry),高次不正乱視成分(higher order irregularity)の4成分に分離したいくつかの例をTMSに搭載された解析ソフトを用いて以下に示す。正常角膜,円錐角膜,全層角膜移植後や屈折矯正手術後の角膜の角膜形状の特徴が非常にわかりやすい形で提示される。
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正常角膜(図2) |
| 左上のオリジナルのカラーコードマップは見慣れたボウタイパターンであり,弱めの直乱視があることがわかる。これをフーリエ解析により分解すると右半分の4つのカラーコードマップが得られる。すなわち球面成分では中心部の屈折力が周辺より若干大きく,正乱視は110度近傍に強主経線を持つ直乱視パターンを示す。不正乱視成分である非対称成分,高次不正乱視成分は角膜の全面にわたってその値は小さいこともわかる。ちなみに定量的な表現法では,この正常角膜の各成分の平均値は中心3mm領域で,球面度数43.76ジオプター(D),正乱視0.53D,非対称成分0.23D,高次不正乱視成分0.13Dである。 |
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図2 正常角膜のフーリエ解析
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円錐角膜(図3) |
| 4成分に分離された各カラーコードマップを見ると,円錐角膜に特徴的な変化が良くわかる。まず球面成分では中心部の屈折力がかなり大きくなっている。非対称成分をみると下方半分が真っ赤になっておりこの部分が非対称的に突出してきていることがわかる。角膜中央のsteep化と下方の部分的な突出という2つの特徴を円錐角膜が持っていることがわかる。正乱視と高次不正乱視はそれぞれ正常に比べ大きくなっているが,球面成分と非対称成分の変化から引き続く副次的な増加のようにも見える。この症例の各成分の平均値は中心3mm領域で,球面度数49.53D,正乱視3.48D,非対称成分2.65D,高次不正乱視成分0.43Dである。図2の正常角膜にくらべ球面度数が6D,正乱視が3D,非対称成分が2.3D,高次不正乱視成分が0.3D大きくなっており,数値的にも球面度数と非対称成分の増加が主体であることがわかる。 |
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図3 円錐角膜のフーリエ解析
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LASIK後角膜(図4,
図5) |
| LASIK後の角膜を2例示す.両例ともに,正常では見られない中心部の寒色系領域が球面成分マップ上に出現しており,LASIKにより角膜中心がフラット化されていることがよくわかる.しかし非対称成分を見ると,図4ではわずかな非対称性しか見られないのに対し,図5では左下の領域が明らかに赤く,LASIKの際に中心がかなりずれてレーザー照射が行われ,術後に大きな不正乱視が惹起されたことが推測される.
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図4 LASIK後角膜のフーリエ解析
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図5 偏心照射が疑われるLASIK後
角膜のフーリエ解析
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全層角膜移植術後角膜(
図6) |
| 全層角膜移植術後の角膜の抜糸前,抜糸後それぞれの角膜形状を示す.オリジナルのカラーコードマップを見ると,抜糸によって角膜全体がsteep化したことはわかるが,それ以外の詳細については判定が難しい(図6a).フーリエ各成分に分けてみると具体的にどのような変化が起きたのかを判定することができる(図6b).球面成分は暖色系に移行し,全体にsteep化したことを示している.正乱視は軸が回転しているが,絶対値としてはそれほど大きく変化していない.非対称成分は軸がやや変化し,かつ絶対値がかなり減少しており,高次不正乱視成分は抜糸によって著明に改善している.このように変化を詳細に評価しフィードバックすることによって,臨床成績の向上に結びついていくことが期待される.
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a
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| b |
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図6 全層角膜移植術(PKP)後の抜糸前、抜糸後それぞれの角膜形状
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(参考文献)
富所敦男、大鹿哲郎:ビデオケラトグラフィーによる角膜不正乱視の定量化.あたらしい眼科 18;1349-1356, 2001.
Oshika T, Tomidokoro A, Maruo K, et al: Quantitative evaluation
of irregular astigmatism by Fourier series harmonic analysis
of videokeratography data. Invest Ophthalmol Vis Sci 39:705-709,
1998. |
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